こんにちは代表の齋藤です。2020年3月末、商標「tagame タガメ」が登録査定されました。この記事ではその出願に至った経緯や特許庁の判断、そして今後の対応についてご説明させていただきます。
無償で商標の権利を公開します
昨年出願した「tagame タガメ」が商標登録査定となりました。私たちが目指すのは昆虫食の普及、昆虫食品市場の拡大です。世の中にタガメ関連商品が増えることは喜ばしいことですので、この商標の権利は私たちで独占せずにみなさんに無償公開します。
範囲は「第29類 動物性・農産物性食品」「第30類 コーヒー、調味料、菓子」「第32類 飲料、ビール」「第33類 酒類」の4区分です。
特許庁とやり取りをする中で興味深いことが判明しました。また、権利放棄できない事情も出てきましたので、商標の登録や維持には多少のお金はかかりますが、これを登録しみなさんに権利公開することを決めました。
予想外の登録査定
この結果は私たちとしては予想外であり、実は登録査定されるとは思っていませんでした。理由としては、タガメは「第29類 動物性・農産物性食品」「第30類 コーヒー、調味料、菓子」「第32類 飲料、ビール」「第33類 酒類」の4区分において一般名称だと考えていたからです。
イワシやニワトリは一般的によく使われる一般名称ですよね。基本的なルールとして一般名称は商標には登録できません。「tagame タガメ」もそれと同じであると考えていました。
ではなぜ、出願に至ったのかという経緯を説明すると同時に、登録されたという事実について考えていきたいと思います。
なぜ、出願したのか?
2019年8月、私たちはタガメサイダーを発売し、同時期に「tagame タガメ」で商標出願をしました。出願の目的は2点です。
・タガメサイダーの発売にあたって、タガメという名称が食品、飲料においての「他社の権利侵害にあたらないか」を確認するため
・タガメは、食品、飲料において「一般名称なのか」単純に興味があったため
タガメの名称は他社権利を侵害するか?
2018年時点で「株式会社那由多のりんご園」様の「tageme」(タゲメ)の登録商標の存在がありました。「tageme」は、タガメサイダーと同じく飲料の区分での登録です。tagame タガメがこの他社の商標を侵害すると判断される可能性が少しだけありました。
さて、ここからが商標の面白いところなのですが、商標の世界ではtageme タゲメとtagame タガメの発音が似ていることから、これらが同じものだと判断されてしまう可能性があるのです。これを「称呼(読み方)の類似」といいます。
過去の判例を見てみると、「BARICAR」(バリカー)という出願に対し、「バリカー」は登録商標「バルカー」の称呼の類似である、といった*判決がありました。第2音の「リ」と「ル」の音の違いで称呼の類似と判断されたのです。*東京高裁昭和60年(行ケ)第170号
今回のtagemeタゲメとtagameタガメも1文字違いで発音も若干似ているので、称呼類似と判断される可能性が少しだけありました。これは出願によってクリアにするしかありません。そして私たちの「tagaeme タガメ」が商標登録された結果、称呼類似には該当しないということが確認できました。
タガメの名称は食品の分野において一般名称か?
この部分は解釈が難しいのですが、登録査定されたことから食品の分野においてはタガメが一般名称でないと判断された可能性があります。私たちは、これが昆虫食業界においてかなりインパクトのある大きな事件だと考えています。
つまり食品の分野において、一般的な昆虫の名称が、何者かによって商標として独占権利化されてしまう可能性があるということです。
現在の判例を見てみるとコオロギは一般名称と判断される可能性が高そうですが、シロアリは?ケラは?ゲンゴロウは?というとわかりません。悪意のある商標ビジネスマンに目を付けられないように願うばかりです。
費用は小さい額ではありませんが、このようなリスクを回避するため私たちは「tagame タガメ」の権利放棄はできないと判断しました。
最後に
あまり深く考えずに取り組んだこの一件ですが、結果は思いもよらないものになってしまいました。小さな業界を正常に発展させるため、特に特許庁の方々には何かあった際に正しい審査と審判をしていただけることを切に願います。
さて、タガメ繋がりになりますが、私たちは絶滅の危機に瀕している日本のタガメの基礎研究を応援する「タガメ基金」を開始します。次回記事では、この「タガメ基金」についてご紹介します。タガメをもっと盛り上げていきます!