昆虫食の栄養価、アレルギー、安全性など、みなさんの疑問にTAKEOの研究開発 三橋がお答えします。
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栄養価、タンパク質、アレルギー、機能性、安全性、食料問題など昆虫を食べることにかかわること
養殖、環境負荷など食用昆虫そのものにかかわること
商品開発、昆虫の購買など、その他(卒論など)
栄養価、タンパク質、アレルギー、機能性、安全性、食料問題など昆虫を食べることにかかわること
昆虫は将来の食料危機、タンパク質不足を救いますか?
もしかしたら救うかもしれないし、全然関係無いかもしれない。
昨今、将来の人口増加による食料危機やタンパク質不足が叫ばれています。しかしこれは食料の絶対量不足の問題であると同時に配分の問題であると僕は理解しています。人間が昆虫を食べるようになればすなわち食料問題が解決する、という単純な話ではありません。
もし本当に食料が足りなくなった場合、食べられるけれども食べていないものは昆虫以外にもたくさんあります。例えば、世界の漁獲量の14%は食べられていません。魚粉やフィッシュオイルなどに加工され、飼料などに用いられています。これらもタンパク質が豊富に含まれており栄養価が高いので、個人的には昆虫よりもこのような資源をちゃんと食べた方が幸せになれる人は多いのではないかと思います。昆虫が唯一の選択肢ということにはなり得ません。
しかし、今から昆虫を食べておけば将来的に「食の選択肢」が増えることは間違いありません。選択肢が多いというのは豊かな食生活のためにとても大切なことです。
コオロギの栄養価は他の食肉と比べてタンパク質が◯倍多い!という情報を見かけますが本当ですか?
コオロギの栄養価としては、他の食肉と同様にタンパク質が豊富に含まれています。生のコオロギはおおよそ水分が70%前後、タンパク質が20%前後です。これは他の食肉と比較して同等と言えます。

コオロギのタンパク質が60%とか70%という情報を見るのですが、一体どういうことですか?
それは乾燥されているからでしょう。どんなものでも乾燥させて水分を抜いてやると、そこに含まれるタンパク質量の割合は相対的に大きくなります。
コオロギに含まれるタンパク質量は生だと約20%であり、これを乾燥させると50~70%くらいに跳ね上がります。この数字は同じく乾燥食品であるビーフジャーキーやかつお節と同じくらいです。また、粉末の昆虫製品の中には脱脂しているものもあります。脂質が減る分だけ、昆虫粉末に含まれるタンパク質の割合はさらに大きくなります。乾燥コオロギは水分、脂質、炭水化物が少ないので相対的に非常に高タンパク質な食品であると言えます。
食品のタンパク質含量や栄養価を比較する際には「生なのか?乾燥品なのか?」によく注意することが重要です。
昆虫を食べる意味って何ですか?
昆虫はふつうの食品と同じくらい豊富な栄養成分が含まれています。ふつうの食品とあわせて、ふつうの食品と同じように食べてもらえると嬉しいです。
現状としては、ふつうの食品よりも新しくてスリルがあってドキドキワクワクしながら食べられるという面は1つの大きな魅力です。人を楽しませ、人を惹きつけるという昆虫食のパワーは無視できません。人は栄養や機能性成分の摂取だけで食品を選択しません。もし将来、肉、魚、野菜などと並んでふつうの食品として受けれ入れられるようになった時には、それは食の選択肢が多い豊かな食生活に貢献していると言えると思います。
アレルギーが心配です。食べても大丈夫ですか?
甲殻類アレルギーをお持ちの方は食物アレルギー発症のリスクが高いと考えられますので、お控えください。甲殻類に含まれるタンパク質や、キチン(外骨格の成分)がアレルゲンになり得ることが報告されています。
体調が悪いときにもアレルギーを発症するリスクは高くなります。体調が悪いときに初めて昆虫食にチャレンジすることはお控えください。
アレルゲンは加熱によって変性し、アレルギーが起こりにくくなる場合があります。昆虫はよく加熱して食べることをオススメします。(生食の文化を否定するものではありません)
とはいえ、昆虫が特別にアレルギーのリスクが高い食品であるとは考えていません。人間は初めて口に入れるものに対しては常に食物アレルギー発症のリスクを有しています。僕の学生時代からの経験では1000人に1人もいない程度であり、これは普通の食品に比べて高い頻度ではないと考えています。TAKEOに参加してからは1件もアレルギーの報告を受けていません。
いずれにしても初めて昆虫を食べる際は「体調が良いときに、よく加熱したものを少しずつ様子を見ながら」をオススメします。
昆虫に機能性成分など身体に良い成分はありますか?
機能性成分についての明確な成果はまだ報告されていないと認識しています。
ただし山口大学の井内良仁先生が昆虫の機能性研究に取り組んでおられます。井内先生は昆虫にアスタキサンチンおよびβカロテンが含有されることを報告しています。さらに乾燥トノサマバッタを与えたマウス群では、対照群と比較して体重増加・内臓脂肪蓄積が抑制されていたことを報告しています。以上の結果は、昆虫食にメタボリックシンドローム抑制効果がある可能性を示唆しています。
今後、昆虫食市場がもっと盛り上がっていけば研究に予算が付くようになり、きっと良い成分が見つかり、機能性に関するエビデンスが示されるでしょう。僕もこの分野の研究が進むことを心から待ち望んでいます。
昆虫には他の食材と同じように豊富な栄養成分が含まれています。各種のアミノ酸、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、食物繊維など……どんな食材にも優れた栄養成分、劣る栄養成分があります。色々な食材をバランスよく食べれば、きっとそれがいちばん身体に良いと思います。
昆虫の形はあるもの無いもの、どっちが人気ありますか?
状況によります。
他人から無理やり食べさせられた場合、それは昆虫の形も味も無い方が好ましいと思います。また栄養摂取を目的とした場合、一般論として粉末の方が消化吸収に優れると思います。
ですが自ら進んで昆虫を食べようとする場合、「昆虫を食べるというスリルを楽しみたい」「昆虫を食べる楽しさを仲間と共有したい」という動機がそこにあります。この動機に応えるためには、昆虫らしい形は必須です。
実際、TAKEOの商品は形があるもの・粉末ともに需要があります。昆虫の見た目について色々な場所でアンケートを取ってみても、状況にはよりますが形があった方がいい・無い方がいい、は大体半々くらいになる印象です。
コオロギのオススメの食べ方はなんですか?
モノによりますが、「食べる昆虫煮干し 京都こおろぎ」は塩味が付いていて臭みも無いですのでそのまま食べるのがおいしいです。
海外産のフタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギはちょっとコオロギ特有の臭みがあります。これらは乾煎りしたりローストしてやると、臭みが飛んで香ばしくなるのでおいしくなります。
養殖、環境負荷など食用昆虫そのものにかかわること
昆虫生産はその他の家畜と比べてエサの要求量が少ないというのは本当ですか?
確かにエサの要求量を少ないかもしれません。ですが、具体的な数字については慎重になる必要があります。
例えば「コオロギ1kgを増やすために必要なエサの量は、ウシの◯分の1」という飼料要求率に関する主張がありますが、事実として語るためにはまだ情報が不足している可能性が高いと考えています。コオロギとウシは同じエサを食べているのでしょうか?違うはずです。エサの栄養価が違いますので、これらを単純に比較して〇分の1と具体的な数字を出すのはあまり意味がありません。
昆虫生産はその他の家畜と比べて環境負荷が小さいというのは本当ですか?
これは難しい問題です。昆虫生産の環境負荷については様々な角度から総合的に検討する必要があります。ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点が重要です。
生産に必要な水の量について、コオロギは確かにウシよりは水を飲む量は少ないように思えます。しかし「バーチャルウォーター」の概念を考慮する必要がありますし、ニワトリと比べたらどうなのかもわかりません。
温室効果ガスの排出についても、ミールワームはブタの1/100など言われていますが、飼育環境の温調に発生する温室効果ガスの排出がどこまで考慮されているのかわかりません。
正直なところ、昆虫がどれだけ環境負荷の面で有利なのか僕には複雑すぎてわかりません。
食べるエサによって昆虫の味は変わりますか?
明確に風味が変わります。
例えば脂質を多く含んだエサで育てられたコオロギは脂質が多いコオロギになります。匂いのきついものを食べたコオロギは、やはりそれなりに匂いがきついコオロギになります。やはり栄養たっぷりのいいエサを食べたコオロギはいいコオロギになります。
昆虫を食べたら昆虫が減ってしまいませんか?
私たちが扱っている昆虫は基本的には食用のために養殖されたものです。したがってこれらを食べることによって自然界に生息する昆虫が減少することは考えにくいです。
しかし、私たちは昆虫を利用する企業であり、昆虫資源に対して無責任ではいられないと考えています。昆虫を利用する企業の責任として、私たちはまず「タガメ基金」を設立しました。これはタガメサイダー含む関連商品の売上の一部をタガメの基礎研究者に寄付し、タガメの基礎研究を応援することで、日本のタガメの保全に貢献しようという取り組みです。
商品開発、昆虫の購買など、その他(卒論など)
昆虫食品の価格が高いのはなぜですか?
需要がまだまだ小さく市場規模が小さいからです。より多くのみなさんがたくさん買ってくれるようになると安くなっていきます。
TAKEOの昆虫加工食品の特徴は何ですか?
昆虫が持つ特徴をできるだけ活かすことを大事にしています。
例えば脱臭した昆虫粉末を使用して強い味付けをしてしまえば、昆虫が入っていることにさえ気が付かずに食べることができます。しかし、それは昆虫である必要がないし、あまり面白くないと私たちは考えています。
私たちは「昆虫らしさ」に正面から向き合った商品作りをしていきます。
国産昆虫と海外産昆虫の違いは何ですか?
最も大きな違いは「鮮度」だと思います。
海外産昆虫は強い熱をかけて乾燥され、時間をかけて輸送されます。その間にやはり少なからずの酸化が起こります。好ましくない酸化臭が付きます。
一方、TAKEOの国産昆虫は鮮度が高いのでフレッシュな風味がします。例えば「昆虫煮干し 京都こおろぎ」では、生鮮コオロギを冷凍で仕入れ、最小限の加熱、乾燥を経て、最後に脱酸素剤を入れてみなさんのもとにお届けしています。やはり昆虫も新鮮なものがおいしいです。
むし畑の取材に行ってもいいですか?
準備のため、もうしばらく時間をください。
むし畑ではより新鮮な昆虫をみなさんに提供するための研究を進めています。昆虫も生き物ですのでなかなか思い通りにいかないというのが現状であり、あまり頻繁にお客様をお迎えできる状態にはありません。少しずつ環境を整えていきますので、もうしばらくお待ちください。
食用昆虫を生産しています。購買してもらえますか?
私たちは特色のある国産昆虫のラインナップ強化に努めています。昆虫の販売をご希望の際はこちらのフォームよりお気軽にお問い合わせください。
私たちは食品加工に関する知見があり、生産者から直接購買し、商品化してきた経験があります。食用昆虫の生産についても、衛生管理を含めた品質管理についての助言をすることが可能です。
自然採集品については応相談とさせてください。自然採集品は、基本的に養殖品よりも衛生的なリスクが高いです。最低限として昆虫種が同定できていること、その昆虫が何を食べているかわかっていることが必要です。各種分析と組み合わせて総合的に安全性を判断させていただきます。
卒論の研究で昆虫食について調べています。売上と顧客情報を教えてもらえますか?ほかにも栄養価とか色々教えてください。
売上や顧客情報などは大事な機密情報なのでダメです。ちなみに昆虫食市場の調査は昆虫食卒論テーマの第1位です。
その他の情報についてはできる範囲で協力します!ですが卒論シーズンは問い合わせが殺到します。全部に答えることは困難ですので、最初は指導教官の先生から連絡していただくよう、ご協力をお願いします。
昆虫食については論文や書籍が増えてきていますので、まずは自分で調べて勉強することが大事です。僕もせっかくならワクワクするような研究テーマに協力したいです。オリジナリティあふれる研究テーマの問い合わせを期待しています。
昆虫食業界に就職したいです。昆虫食が学べる大学はどこですか?
まず、昆虫食は学問として体系化されていないので、日本で昆虫食を専門に学ぶことができる大学はありません。
昆虫食というのは昆虫そのもの、それを利用する人間、そのどちらの視点も欠かせない非常に学際的な分野です。言い換えれば、どんな研究領域からも昆虫食にアプローチすることはできると思います。好きな切り口から、自分で切り開いていってください。
昆虫食ビジネスにあたっては、どんな専門性を身に着けるかが重要だと個人的には思います。デザインのスキルを持った人がデザインの視点から、栄養学のスキルを持った人が栄養学の視点から、それぞれのスキルを活かして昆虫食に取り組む人は非常に魅力的です。
なぜ昆虫食というとコオロギばかりなのですか?
その歴史は僕はわかりません。以下は個人的な考えです。
世界の主要な食用昆虫はコオロギ、ミールワーム、カイコだと思います。コオロギとミールワームは爬虫類などのペットのエサとして安定した需要があり、昔から養殖されてきました。カイコはシルク産業の副産物として、さなぎが大量に産出されてきました。これらがメジャーな食用昆虫となるのは必然だと思います。
この中でもコオロギが覇権を握っている理由としては食感だと思います。昨今の昆虫食ブームは欧米諸国から火が付きました。欧米人はサクサク、ザクザクした食感(crispy, crunchy)が大好きです。この中では一番コオロギの食感が良いです。