【TAKE-NOKO イベント】蚕繭祭(さんけんさい)with アシザワ養蚕

伊藤あずき

こんにちは、TAKEO実店舗「TAKE-NOKO」のスタッフ、伊藤と申します。
私が見て、触って、食べた思い出が、いつまでも鮮明に残りいつでも映像のように再生できたら良いなと思いながら、蚕繭祭の記録としてここに書き留めさせて頂きます。

蚕繭祭とは

蚕繭祭(さんけんさい)とは、2023年2月18~25日にTAKE-NOKOで実施されたイベントです。キャッチコピーは「見て、触って、食べて。」アシザワ養蚕の芦澤洋平さんと一緒に五感を使ってお蚕さまに親しみ、養蚕農家さん、私たち、みなさま、そしてお蚕さまが繋がるイベントです。

カイコの幼虫の生体展示、養蚕に関わる資料の展示、まゆ細工、ぬいぐるみなどの工芸品の展示、まゆ玉を使ったワークショップ、芦澤さんによる1日店長やトークショーなど、盛りだくさんの企画をお届けしました。また、TAKE-NOKO新メニュー「蚕の糞茶漬け」も提供開始となりました。


カイコ糞茶漬け

アシザワ養蚕について

今回一緒にお祭りを作り盛り上げて下さったのは、山梨県で150年続く養蚕農家 アシザワ養蚕の6代目、芦澤洋平さんです。

過去にご一緒したイベントでも養蚕に関する血の通った経験談と、新しい視点を与えて下さるような素晴しい講演をして下さいました。とても親しみのある明るい方で、時折お蚕さまのぬいぐるみを大切そうに抱えて毛玉を取る姿は失礼ながら可愛らしさまで覚えました。

アシザワ養蚕ホームページ:https://ashizawa-yousan.jimdofree.com

蚕繭祭レポート

《2/18~24 蚕繭祭 日常の部》
既にSNSで蚕繭祭のことをご存知の方が多く、展示物を見るだけでなく昆虫食メニューも併せて召し上がって下さる方が多かったです。特に蚕糞茶漬けとまゆさしは多くの方がご注文して下さり、お客様の半分以上が頼まれていた印象でした。いち早く新商品の味を確かめたいという思いが伝わってきて、嬉しい気持ちになりました。

時折混雑することはありましたが、基本的にゆったりとした穏やかな時間が流れていきました。夕方お客さんが一組だけになり、静かな店内でゆっくりと真剣にまゆ細工のワークショップに取り組む姿を拝見し、このお祭りの空気感の心地よさを改めて感じました。中には学生時代に蚕の研究をしていたという方も来て下さり、本当に色々な方にお蚕さまは愛されているのだなあと実感する日々でした。

2/19、23には芦澤さんも1日店長として店頭に立ってくださり、お客様への解説や素朴な疑問への返答など様々なご対応をして頂きました。

カイコの幼虫も毎日沢山の飼料を食べてすくすくと成長し、最終日直前にはむちむちで愛らしい姿も拝むことが出来ました。今までお蚕さまには馴染みのなかった自分ですが、一日中こうして彼らと一緒に過ごすことで成長が間近で感じられ、気が付けばなくてはならない日々の癒やしとなっていました。

《2/25 蚕繭祭 アシザワ養蚕スペシャルトークショー》
最終日は蚕繭祭のメインイベント、アシザワ養蚕 スペシャルトークショーです。第1部はお子様優先、ブレイクタイムを挟んで第2部は大人向けです。

第1部
開店直後からトークショーを目的としたお客様(常連さん、芦澤さんファンの方、初見さん問わず)が多く来店しました。土曜日のお昼時ということもありランチやお酒を召し上がる方も多く、多少の混雑はありながらもとても平和な空気感でした。特に常連さんの男の子は、お父さんと一緒に作った繭を使ったLEDライトの試作品を棚に飾って店内をより明るく彩ってくれました。中には蚕繭祭の事を知らずにたまたま来店し、午後のトークショーのご案内をするとそのまま参加して下さる方もいらっしゃり、縁が紡がれていく瞬間に立ち会えた気がしました。開始1時間半前の時点で満席(20名オーバー)となる盛況ぶりでした。

トークショー本編では、養蚕業の概要、日々働く中で感じること(お蚕さまに優しく出来ているか)、時折みせるお茶目な一面(桑の枝を回収した後きちんと束ねないからよく道に落としてしまう)、大企業に対して抱いている気持ち等をお話し頂きました。

途中、トークテーマを決めるサイコロが登場します。女の子が転がして選ばれたテーマは「レア・コア・ツアー」(※芦澤さんの造語)でした。これが私にとって特に印象的でした。

「レア」とは養蚕農家のような現在では希少な業種にいる人達のこと、「コア」とは専門知識を有する方や、料理人などのその道を極めて独自の視点を持った職人さんのような人たちのこと、そしてその両者をつなぐ機会・議論の場を作る「ツアー」です。普段交わる機会の少ない人たちが顔を合わせることで化学反応が起きて新価値が生まれる可能性があるんだ、という芦澤さんのお話にはとても胸が躍りました。

芦澤さんは養蚕農家だけでなく、成虫から卵を産ませる業者、繭から糸を取り出す業者、そしてシステマチックに均質な蚕を大量に生み出す大企業の方々へ対しても思いを巡らせていきます。さらに芦澤さんは語ります。「中心にいるお蚕さまとも100年先6000年先も変わらず関係を続けていきたい。そのために自分に何が出来るか常に考えていきたい、常に『変進』していきたい」その瞳は未来への希望と覚悟をたたえているように見えました。

第1部はお子様優先タイムということもあり、最前列で目をキラキラさせながら芦澤さんの話に聞き入る子供たちの様子がとても印象的でした。明るい未来を想像させてくれるような、そんな気持ちになりました。

第2部
休む間もなく、すぐに第2部が始まりました。第1部と同じく満席でしたが、雰囲気も参加者の方の表情も変わったように思われました。大学の講義のような落ち着いた真剣な雰囲気だった印象です。

2回目のサイコロトークで選ばれたテーマ「芦澤さんが今一番やりたいこと」では、「蚕蚕祭(さんさんさい)」についてご説明して下さいました。それは生産者とかいこを中央に、様々な方法で蚕繭について表現されたものを集めるお祭りです。わたしたち昆虫食事業者をはじめ、イラストやモチーフアクセサリーなどの作家さん(アマチュア大歓迎!とのこと)、自然科学や宗教文化の教育者や蚕を利用した医薬品の研究者などなど・・かいこに関わるあらゆる人が一同に集まるお祭りをやれたら、と楽しそうに語る芦澤さんの表情は輝いていました。

スタッフとしての所感

準備期間を含めた約一ヶ月間、それは多くの発見と学びがあり、お蚕さまを愛するたくさんの人と関わりを持つことができた貴重な日々でした。養蚕農家の方とイベントを一緒に作り上げていく新鮮で少し緊張する気持ち、会場が盛り上がった時にそれを皆さんと共有し合える幸せをひしひしと感じました。この蚕繭祭というイベントでしか得る事の出来ない、かけがえの無い経験だったと思います。特に芦澤さんの「常に変化し、進んでいく」という意志の表れである「変進」という言葉は、自分の中にも今後も残り続け生きる上での道標の一つとなりそうです。

また芦澤さんのお人柄も印象的でした。一日店長の際には終始優しい笑顔で姿勢よく店内に立っていて下さり、お蚕さまの大きなぬいぐるみを時折抱っこしては撫でたり形を整えてあげたり、毛玉を丁寧に取ったりしていました。そういった様子からも、お蚕さまに対する愛情もとても深くお持ちであることが伝わってきました。また、Twitterでもその日の様子や店内のお蚕さまの愛らしさを発信して下さり、マメでサービス精神にもあふれていました。そんな芦澤さんと話をしていくうち、養蚕という仕事がみるみるうちに鮮やかな体温を持った事柄としてこの身体に馴染んでいくような気がしました。

そして何よりカイコの幼虫の可愛さをここまで強く実感した事はなかったので、彼らへの親しみが一気に増しました。これから先シルク製品などを目にする度に、この子達の可愛さを思い出すことと思います。

最後になりましたが、お越しいただいた皆様、SNSを見て興味を持って下さった皆様、そして何より多くの人との縁をつなぐきっかけを下さった芦澤さん、誠にありがとうございました。今後も芦澤さんのような普段直接関わることの少ないお仕事をされている方をお招きして、また色々なイベントを行うことが出来たら幸せだなあと思いました。

資料が撤収された店内はどうしても寂しく見えてしまいますが、お預かりしたお蚕さまともう少し一緒に余韻を味わいながら過ごしていきます。また御縁がありますように。

TAKE-NOKOスタッフ 伊藤 あずき

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