昆虫食のTAKEOは、冷凍食品メーカー大手のニチレイさんと資本提携することになりました。
本記事ではプレスリリースには書けなかった私たちの思いや裏話をお伝えします。
本記事の概要
TAKEO株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役:齋藤 健生、以下「TAKEO」)は、2022年7月15日付にて、株式会社ニチレイ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大櫛 顕也、以下「ニチレイ」)と資本提携に至りましたことをお知らせします。
TAKEOは昆虫食専門企業として2014年に創業して以来、昆虫が野菜、魚、肉などと同じような食として楽しまれるより豊かな食卓の実現 に向けて多角的に昆虫食事業を推進してきました。今回の資本提携を通じてニチレイが持つノウハウを活用し、昆虫食品の開発、製造、販売を強化していきます。
【プレスリリース】昆虫食のTAKEO、ニチレイと資本提携
本記事ではプレスリリースには書けなかった私たちの思いや裏話をお伝えします。
TAKEOにとって大きな一歩だ
TAKEOは常勤として代表の齋藤健生、TAKE-NOKO店長の三浦みちこ、養殖や研究開発担当の三橋亮太の3名、他に非常勤として技術顧問の佐伯真二郎、デザイナーのさとみち、アドバイザーの上田仁士、そしてスタッフの妻や母などの協力者数人で構成されています。
TAKEOは潤沢な資金があるわけでもなく立派な経歴を持つ人材がいるわけでもない、等身大ベンチャーです。そんな環境でこれまで昆虫食品の輸入、販売、自社でのトノサマバッタの養殖、研究開発、自社工場での製造、実店舗の運営まで総合的に取り組んできました。思い通りいかないことばかりで、会社に絶望してしまう場面もたくさんありました。
しかし今回、私たちはニチレイという大変心強いパートナーを得ることができました。これですぐに会社が急成長したり絶好調になったりするわけではありません。それでも私たちは大きな希望を得ることができました。今度こそTAKEOが飛躍できる気がしてなりません。今、私たちは昆虫が楽しまれる豊かな食卓の実現に向け、大きな一歩を踏み出すことができました。
ニチレイと組んでTAKEOは何が変わるのか?
ニチレイと資本提携することによってTAKEOはいくらかのお金を得て、かつニチレイから各種業務において部分的にサポートを得ることができるようになりました。ニチレイから得たお金は主として今後の研究開発やチームの強化に活用される予定です。
今後、TAKEOは何か変わるのか?ニチレイにサポートしていただくからには、もっとちゃんと、かつ効率的に仕事ができるようにならなければなりません。より一層高いコンプラインアンス意識を持ち、新しいチャレンジをしつつも各種業務の効率化に取り組んでいきます。
ただし今後もTAKEOの独立性は担保されます。私たちの思いや事業方針は何も変わりません。みなさまにはこのままパワーアップしていくTAKEOの姿をお見せすることができると信じています。
提携に至った経緯と理由
2022年1月、ニチレイ戦略本部新価値創造部の武藤正道さんから問い合わせをいただいたことがきっかけです。「昆虫を利用した新規ビジネスを検討しているから情報交換させてほしい」というものでした。武藤さんは昆虫食市場をよく研究され、既に手も動かしており、本気であることはすぐにわかりました。そしてやり取りを重ねる中でありがたいことにTAKEOを高く評価していただき、ある日提携という言葉が飛び出してくることになりました。
実は似たような話は過去にも数件ありましたが、形になることはありませんでした。私たちは「おいしさ、楽しさ」を共有できるかどうかを基準に判断をしてきたためです。TAKEOは昆虫のおいしさ、楽しさを開拓し、正直な姿勢でみなさまにそれをお届けする食品メーカーだからです。
おいしい瞬間を届けたい
日本の食生活を良くしたい
創立以来、この高い志を胸に、多彩な事業を展開し、単なる食品企業に収まらない食のフロンティアカンパニーとしての道を歩んでまいりました。ニチレイは、「長期保存」、「品質保持」、「食材の再現性」といった 特性を持つ”冷力”を事業のコアとして、その特性を活かした事業を展開することで 日本の食生活より良くし、社会からの期待に応えてまいります。その結果として、社会に信頼され、さらなる成長を目指してまいります。
ニチレイのホームページからの引用です。特に「おいしい瞬間を届けたい」「日本の食生活を良くしたい」「食のフロンティアカンパニー」「社会に信頼され」のあたり、食の開拓者としての力強さがありつつも一流の食品企業としての自負や安心感が感じられて、良いですよね。
ニチレイは70年以上前から冷凍食品というおいしさを開拓し、社会からの信頼を得てきました。ニチレイは食の開拓者としてTAKEOの大先輩にあたります。そんな先輩にサポートいただける絶好の機会があるならば逃せません。
また、私たちは採れたてのフレッシュな昆虫がおいしいと考えています。そして一番おいしい昆虫をみなさまにお届けするためには、冷凍に関する各種技術がポイントになることは私たちが以前から確信していたところでした。ニチレイとの提携のお話はまさに渡りに船、というところでありました。
というのが、提携の経緯と主な理由でした。
「ニチレイ75年史」を深掘りする
提携を検討する過程で、私たちは「ニチレイ75年史」を読み込みました。ニチレイが創立75周年の記念として2022年に発行した社史です。ここから私たちに刺さった部分を抜粋します。
p.44
冷凍食品事業に本格的に取り組み始めたのは、1950年頃からだった。
当時の日本では「冷凍した食品は品質が劣っておいしくない」との根強い先入観があった。これを払拭するため当社は各地で料理講習会や試食会を積極的に開催した。p.177
「冷凍はおいしい」を広めるため、担当社員が自ら銭湯など人が多く集まる場所でデモンストレーションを行うなど地道な普及活動を続けるとともに、消費者の生の声に触れ、商品開発に役立てていった。p.57
そうして1950年代後半からまずは学校給食を中心とした業務用ルートで冷凍食品の利用が始まり、普及活動とともに市販用商品も百貨店などで徐々に取り扱いを拡げていた。また、家庭用電気冷蔵庫が1ドア式から冷凍を強化した2ドア冷凍冷蔵庫に進化し、普及した影響は大きかった。引用:ニチレイ75年史
どこか昆虫食の黎明期、ちょうど今の状況に似ていると思いませんか?「おいしくない」という先入観から始まり、環境の変化によって消費者が徐々に手に取りやすくなりつつあるこの状況です。
その後ニチレイや他の当業者たちの努力によって、冷凍食品のおいしさが一般家庭の日常に浸透していったのは言うまでもありません。時代が違えど、このニチレイが歩んできた歴史から昆虫食市場が学ぶことができるところがたくさんあるに違いありません。こうして「ニチレイ75年史」からも私たちはニチレイと組むべき理由を見出していきました。
ニチレイさんからコメントいただきました
代表取締役社長の大櫛さん、そして私たちに声をかけてくださった武藤さんからTAKEOのために温かいコメントをいただきましたので、ここに掲載させていただきます。
■株式会社ニチレイ 代表取締役社長 大櫛 顕也 様
当社は加工食品や低温物流などの事業を展開し、食生活と健康を支えている企業です。安定的かつ持続的な供給を責務とする当社にとって、「昆虫」は多くの可能性を秘めた食材です。TAKEO社の目指す、肉や野菜と同じように昆虫が楽しまれる食卓は、将来直面し得る食糧危機に対し、解決の糸口となり得るものと感じています。一方、世界で食されている昆虫は1900種類以上とも言われる中で、食材としての魅力を追求した料理や食品はそれほど多くありません。“私たちは地球の恵みを活かしたものづくりと、卓越した物流サービスを通じて、豊かな食生活と健康を支えつづけます”という当社のビジョンと共通した価値観を持つTAKEO社とともに、どんな化学反応を起こすことができるのか、これからの取り組みに期待しています。
■株式会社ニチレイ 戦略本部新価値創造部 シニアプロフェッショナル 武藤 正道 様
昆虫の起源は約4億年前、人類は約500万年前とされています。諸説ありますが、アインシュタインは、ミツバチがいなくなったら、人類は4年で絶滅すると警鐘を鳴らしました。生き物の大先輩であり、地球の一員として欠かせない昆虫は、高い代謝能力と栄養価を持ち、持続可能性に優れた食料資源でもあります。昆虫食をより身近にする事は、私たちがこれまで以上に地球環境と共存するための大きな手掛かりとなり得ます。その一歩として、昆虫食に新たな価値を提供しているTAKEO社とともに、事業を進められる事を大変光栄に思います。
調子に乗らず、等身大で頑張っていきます
2020年のニチレイ75周年の際、社長の大櫛さんは「さらに100年続く企業」を目標として掲げました。TAKEOはまだ8周年。100年先のことなんて想像もつきません。調子に乗らずにまずは10周年を目標に、おいしく楽しく安全な昆虫食を等身大でみなさまにお届けできるように頑張っていきます。
更新日:2023年3月7日
更新者:齋藤健生
一部、誤解を招く内容になっていましたので更新しました。