

2月に宮城県気仙沼市の山間部へ帰省しました。なぜこの時期に帰省したかといえば、カメムシ収穫のためです。
カメムシというと、どうしてもあの独特のにおいが、真っ先に思い浮かぶ人も多いと思います。私にとっては日常に寄り添う存在であり、ある意味「特別でもあり、特別でもない」不思議な虫です。
そんなカメムシが、TAKEO社内で食材として注目され始めています。その注目度といえば社内でもかなり高く、弘前大学と共同研究をしているくらいです。そうなれば、自分自身の手で捕獲したものをお客さんへ届けてみよう、これが帰省のきっかけです。
越冬カメムシの収穫作業
気仙沼の山あいは晴れ間が広がり、気温は-4℃から最高で8℃ほど。空気は冷たいですが、日差しがあるだけで体感がずいぶんと違います。今回の場所は、市街地から少し離れたところにあります。
木材を使用する仕事が行われているこの場所では、木材を乾かす専用の場所があり、そこがカメムシたちの格好の越冬場所になっています。
実際に作業を始めてみると、期待以上です。木材が濡れないようにかけているシートやトタンの隙間や、乾燥中の木材同士の狭い空間に、びっしりとカメムシがくっついています。
この地域のカメムシは、9月頃から越冬の準備に入るため、2月にもなれば固まって静かに冬を越している状態です。虫取り網を使って豪快に収穫!とはいかず、実際にはかなり地道な作業が必要になります。
収穫作業を通じて改めて感じたのは、カメムシは想像以上に「寒さに耐える力が強い」ということです。死んでいるものは見当たらず、生きた個体は木材にしっかり脚をかけていて、ちょっとやそっとでは落ちません。
カメムシ大量捕獲とその後の手間
今回の作業では、わずか二山(それぞれ2m×2mほどの小規模なエリア)から合計で約3000匹ものカメムシを収穫しました。実質1時間ほどでこれだけ集まったので、仕掛け次第ではさらに効率を上げることもできそうです。
しかし、大量捕獲できたからといって終わりではありません。次に待ち受けるのが、異物除去や洗浄といった工程です。木材の破片やおがくずを丁寧に取り除いていきます。この作業は、思いのほか骨が折れます。
洗浄方法によっては、カメムシが本来の持つ「さわやかな香り」を失いかねないため、この点も要検証です。冷凍してから洗浄するか、洗浄してから冷凍するのか、今後の課題も多いです。
カメムシを傷つけないように、そして刺激してにおいを放出させないように細心の注意を払います(においが食材として魅力だと思っているので)。
においへの抵抗感が薄れる不思議
今回、興味深かったのは、収穫や洗浄といった作業を続けるうちに、自分自身がカメムシのにおいに対してほとんど抵抗を感じなくなっていたことです。
むしろ「スウィーティー」のようなフレッシュな柑橘系の香りに近い、とさえ思えた自分がいました。人によっては受け付けないものかもしれないし、全員におすすめできる体験ではありません。それでも、実際に触れてみることで感じ方が変わるというのは、カメムシが持つ不思議ポイントのひとつかもしれません。
カメムシの今後の展望
収穫を通じて見えてきたのは、カメムシの越冬パターンをうまく利用すれば、効率よく大量に捕獲できる可能性がある、ということです。
計画的に「カメムシ越冬小屋」を作ることも夢ではありません。夏のうちに準備を終え、9月頃から越冬に向けてやってくるカメムシを待ち受ける。そのための設計や実験はまだまだこれからですが、地域資源として新しい活路を見いだすチャンスでもあると思っています。
カメムシ収穫のまとめ
久々に帰省し、2月の寒さの中でカメムシを収穫してみた結果、現地では「嫌われ者」だったカメムシを、私自身は、さらに身近に感じることができました。これは大きな収穫です。
もちろん、カメムシが多く発生する地方で、好き好んでカメムシを収穫する人は稀だろうし、今後、私たちがどこまで需要をつくれるかも未知数です。
しかし、今回の作業を通して見えた新たな価値や可能性は、今後の研究や食文化の種になるかもしれません。
そして、カメムシと私の関係もまだまだ続きそうです。思わぬ方向へ展開していくのではないか、と不安を抱きながらも、その答えを探しに、また気仙沼の山へ足を運ぶ日が待ち遠しいです。